
障害者が、相続(または遺贈)により財産を取得した場合、
その者が、下記の要件に該当するときは、
相続税の障害者控除を受けることができます。
※ 遺贈については、「遺贈|包括遺贈と特定遺贈,条件付遺贈と負担付遺贈」をご確認ください。
※ 相続を放棄しても、
財産を取得した場合(遺贈により生命保険金を取得した場合など)は、
障害者控除を適用できます。
※
相続の放棄については、「相続の放棄|手続きと相続税申告」を、
生命保険金については、
「生命保険金|相続税法上の取扱いと非課税」をご確認ください。
相続税の障害者控除を受ける者の要件

障害者控除を受けるためには、
その者が、
- 相続(または遺贈)により財産を取得する
- 相続開始時に、日本国内に住所がある(一時居住を除く)
※ 日本国内に住所がなくても、適用を受けられる場合もあります。
詳細は、「国税庁 No.4167障害者の税額控除」をご確認ください。
- 相続開始時に、障害者である
- 法定相続人である
のすべてを満たす必要があります。
※ 法定相続人については、「相続人と相続分|法定相続人と法定相続分」をご確認ください。
障害者とは

障害者とは、次に掲げるような心身に障害のある方です。【国税庁 ホームページより抜粋】
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある方(特別障害者)
- 精神保健指定医などにより知的障害者と判定された方(重度の知的障害者と判定された方は特別障害者)
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方(障害等級が1級の方は特別障害者)
- 身体障害者手帳に身体上の障害がある者として記載されている方(障害の程度が1級又は2級の方は特別障害者)
- 戦傷病者手帳の交付を受けている方(障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までは特別障害者)
- 原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている方(特別障害者)
- いつも就床していて、複雑な介護を受けなければならない方(特別障害者)
- 精神又は身体に障害のある65歳以上の方で、その障害の程度が1、2又は4に準ずるものとして市町村長、特別区の区長や福祉事務所長の認定を受けている方(1、2又は4のうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方は特別障害者)
また、
成年被後見人も、
「相続税の障害者控除の対象となる特別障害者」に該当する旨が、公表されています。
(所得税においても、特別障害者に該当)
※ 国税庁ホームページ「成年被後見人の相続税における障害者控除の適用について」参照
相続税の障害者控除を受けることができる額(障害者控除限度額)

満85歳になるまでの年数×10万円(特別障害者の場合は20万円)
※ 1年未満の期間は、切り上げて1年とします。
例えば、
相続開始時に、障害者(一般)の年齢が35歳7月であった場合には、
満85歳になるまでの年数は、49年5月ですが、
5月を切り上げて1年とし、
「50年×10万円=500万円」の障害者控除を受けることができます。
控除をしきれない場合

障害者の相続税額より、上記の控除額の方が大きい場合には、
障害者控除限度額のうち、引き切れない金額を、障害者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
※ 扶養義務者とは、
- 配偶者
- 父母・祖父母などの直系尊属
- 子供・孫などの直系卑属
- 兄弟姉妹
- 生計同一の3親等内親族
- 家庭裁判所が扶養義務者と定めた3親等内親族
などです。
今回の相続より前に、障害者控除を受けたことがある場合の控除額

最初の相続の際の障害者控除限度額-今回の相続までに障害者控除を受けた金額
「今回の相続までに障害者控除を受けた金額」には、
扶養義務者が、今回の相続までに控除を受けた金額を含みます。
過去に、障害者控除限度額の全額を適用済の場合には、
今回の相続で、障害者控除は適用できません。
財産を取得しなければ、適用を受けられない

障害者控除は、
相続(または遺贈)により財産を取得しなければ、
適用を受けることができません。
障害者の相続税から控除しきれない場合には、
障害者の扶養義務者の相続税から控除することができるため、
★ 障害者は、少額でも財産を取得した方が、扶養義務者の相続税負担が減り、その分、障害者の生活基盤を確保することができます。
※ 障害者の成年後見人を家庭裁判所に選出してもらう場合には、
障害者にとって不利にならない遺産分割協議案の提出が必要なため、
法定相続分以上の財産を取得することになります。
障害者本人が受けられる優遇措置
相続税の優遇措置

- 障害者控除:上記参照
- 心身障害者扶養共済制度(地方公共団体 条例)に基づく給付金を受ける権利:不課税
贈与税の優遇措置

- 心身障害者扶養共済制度(地方公共団体 条例)に基づく給付金を受ける権利:不課税
- 特定障害者を受給者とする信託受益権:非課税(3,000万円、特別障害者は6,000万円)
※ 特定障害者:特別障害者・障害者のうち、精神に障害がある者
所得税の優遇措置

- 障害者控除:所得控除(27万円、特別障害者は40万円)
- 心身障害者扶養共済制度(地方公共団体 条例)に基づく給付金:非課税(脱退一時金は課税)
障害者を扶養している親族が受けられる優遇措置
所得税の優遇措置

- 障害者控除:所得控除(27万円、特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円)
※ 生計同一配偶者、扶養親族(16歳未満も可)が障害者の場合
あとがき

相続人の中に障害を持つ方がいる場合、
- その者の生活を保障するため、
- その者の医療費の負担(医療費や療養費)の負担を軽減するため、
障害者控除の規定が、設けられています。
障害者ご本人の相続税から控除しきれない場合には、
扶養義務者の方々の相続税から控除できるようになっているのも、
扶養義務者の方々が協力して、
障害を持つ方々の生活を支えようとする目的のためです。
相続税以外の優遇措置についても、載せておきましたので、
内容をご確認くださればと思います。