
未成年者が、相続(または遺贈)により財産を取得した場合、
その者が、下記の要件に該当するときは、
相続税の未成年者控除を受けることができます。
※
遺贈については、
「遺贈|包括遺贈と特定遺贈,条件付遺贈と負担付遺贈」をご確認ください。
※
未成年者が相続を放棄しても、
財産を取得した場合(遺贈により生命保険金を取得した場合など)は、
未成年者控除を適用できます。
なお、
未成年者が、相続を放棄する場合には、
特別代理人が手続きを行う必要があります。
※
相続の放棄については、
「相続の放棄|手続きと相続税申告」を、
生命保険金については、
「生命保険金|相続税法上の取扱いと非課税」をご確認ください。
相続税の未成年者控除を受ける者の要件

未成年者控除を受けるためには、
その者が、
- 相続(または遺贈)により財産を取得する
- 相続開始時に、日本国内に住所がある(一時居住を除く)
※ 日本国内に住所がなくても、適用を受けられる場合もあります。
詳細は、「国税庁 No.4164未成年者の税額控除」をご確認ください。
- 相続開始時に、20歳未満である
※ 令和4(2022)年4月1日より、未成年者は、満18歳に達する日をもって、成人となります。
- 法定相続人である
のすべてを満たす必要があります。
※ 遺贈により財産を取得した孫が、未成年者であった場合、
その孫は、代襲相続人でない限り、法定相続人にはなりませんので、
未成年者控除を受けることはできません。
※
法定相続人については、
「相続人と相続分|法定相続人と法定相続分」をご確認ください。
相続税の未成年者控除を受けることができる額(未成年者控除限度額)

満20歳になるまでの年数×10万円
※ 令和4(2022)年4月1日以降の相続においては、満20歳を、満18歳に読み替えます。
※ 1年未満の期間は、切り上げて1年とします。
例えば、
相続開始時に、未成年者の年齢が14歳6月であった場合には、
満20歳になるまでの年数は、5年6月ですが、
6月を切り上げて1年とし、
「6年×10万円=60万円」の未成年者控除を受けることができます。
控除をしきれない場合

未成年者の相続税額より、上記の控除限度額の方が大きい場合には、
未成年者控除限度額のうち、引き切れない金額を、未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
扶養義務者とは、
- 配偶者
- 父母・祖父母などの直系尊属
- 子供・孫などの直系卑属
- 兄弟姉妹
- 生計同一の3親等内親族
- 家庭裁判所が扶養義務者と定めた3親等内親族
などです。
ただし、
相続時精算課税を選択していた未成年者が、贈与者より先に亡くなった場合、
贈与者の相続税の計算では、
未成年者控除限度額のうち、引き切れない金額があっても、
未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことはできません。
※
相続時精算課税については、
「相続時精算課税制度|メリット・デメリットと選択すべきケース」をご確認ください。
今回の相続より前に、未成年者控除を受けたことがある場合の控除額

最初の相続の際の未成年者控除限度額 - 今回の相続までに未成年者控除を受けた金額
※ 令和4(2022)年4月1日より、
上記の「最初の相続の際の未成年者控除限度額」は、
当時「満20歳」として計算していたものを、
「満18歳」として計算し直した金額となります。
過去の相続が、令和4(2022)年4月1日より前であっても、
「満18歳」として計算し直します。
また、
「今回の相続までに未成年者控除を受けた金額」には、
扶養義務者が、今回の相続までに控除を受けた金額を含みます。
過去に、未成年者控除限度額の全額を適用済の場合には、
今回の相続で、未成年者控除は適用できません。
婚姻(結婚)した者の未成年者控除

民法においては、
未成年者が、婚姻(結婚)した場合には、
成年とみなされることが定められています。
それでは、
未成年者が婚姻(結婚)した場合に、
相続税の未成年者控除も適用できなくなるのかといえば、
民法において、成年に達したものとみなされた者についても、未成年者控除は適用可能です。(相続税基本通達19の3―2)
なお、
現状では、民法において、
婚姻できる年齢を、男性18歳以上、女性16歳以上と定めています(民法第731条)が、
令和4(2022)年4月1日より、
成人年齢が、20歳から18歳に引き下げられることに伴い、
女性の結婚できる年齢は、18歳に引き上げられます(男性は変更なし)。
したがって、
民法における成年擬制の規定は削除され、
この制度は消滅することになります。
未成年での婚姻(結婚)という概念もなくなりますので、
「婚姻(結婚)した者は、相続税の未成年者控除を受けられなくなるのか」
という疑問も生じなくなりますね。
財産を取得しなければ、適用を受けられない

未成年者控除は、
相続(または遺贈)により財産を取得しなければ、適用を受けることができません。
未成年者の相続税から控除しきれない場合には、
未成年者の扶養義務者の相続税から控除することができるため、
★ 未成年者は、少額でも財産を取得した方が、扶養義務者の相続税負担が減らせることができるので、その分、未成年者の養育に資金を充てることができます。
※ 未成年者の特別代理人を家庭裁判所に選出してもらう場合には、
未成年者にとって不利にならない遺産分割協議案の提出が必要なため、
法定相続分以上の財産を取得することになります。
※
相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議については、下記もご確認ください。
あとがき

相続人の中に、未成年者がいる場合には、
その者が成人になるまでの資金(教育費など)を確保するため、
未成年者控除の規定が設けられています。
未成年者本人の相続税から控除しきれない場合には、
扶養義務者の相続税から控除できるようになっているのも、
未成年者の健全な成長を担保する目的のためです。
幼くして、両親との死別など、
未成年で相続人となる場合もあるかと思いますが、
それらの方々の健やかな成長を願います。