
本特例には、
- 一般措置
- 平成30年度の税制改正で創設された特例措置
がありますが、
両者のうち、特例措置について、解説します。

国税庁|非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらましより
制度(特例措置)の内容

後継者が、
平成30年1月1日から令和9年12月31日までの間に、
円滑化法の認定を受けた非上場株式等を、
先代経営者等から、相続により取得した場合に、
相続開始日の翌日から5か月を経過する日において、その会社の代表権を有し、
その非上場株式等を保有し続けること等の要件を満たすときは、
その非上場株式等についての相続税の納税が猶予され、
さらに、
後継者が死亡した場合等には、
納税が猶予されている相続税の納付は、免除されます。
※
すでにこの制度(一般措置または特例措置)の適用を受けている者が、
他の者から相続した同じ会社の非上場株式等についても、
この制度の適用を受けようとする場合には、
その相続が、
最初の贈与等の日から、経営承認期間の末日までの間に、申告期限が到来する相続でなければ、
この制度の適用を受けることはできません。
※
非上場株式等の贈与税の納税猶予については、
「非上場株式等の贈与税の納税猶予|法人版事業承継税制」をご確認ください。
※
経営承認期間とは、
この特例を受けようとする相続税の申告期限の翌日から、
下記の1と2のいずれか早い日までの期間をいいます。


国税庁|非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらましより

※
この制度の適用を受けようとする後継者は、
「特例承継計画」を策定して、
認定経営革新等支援機関に、所見を記載してもらい、
令和5年3月31日までに、都道府県知事に提出し、
その確認を受け、
その後、
相続開始後8か月以内に、
適用要件を満たしていることについて、改めて都道府県知事に申請を行い、
円滑化法の認定を受ける必要があります。
※
特例承継計画は、相続後に提出することも可能です。
※
非上場株式等の発行会社は、中小企業者に該当し、
- 上場会社
- 資産管理会社(資産保有型・資産運用型会社)
- その他一定の会社
を除きます。
※
この制度を継続適用するためには、その適用期間中、
- 経営承認期間内は、毎年、
- 経営承認期間経過後は、3年ごとに、
税務署に、「継続届出書」を提出する必要があります。
適用要件

1.被相続人(先代経営者)の要件
- 代表権を有していたこと
- 相続開始直前において、被相続人グループの議決権数が50%超であり、かつ、被相続人または後継者が、最も多くの議決権を有していたこと
※
相続開始直前において、
すでに法人版事業承継税制の適用を受けている者がいる場合には、
上記の要件はいずれも不要です。
2.相続人等(後継者)の要件
- 相続開始日の翌日から5か月を経過する日において、代表権を有していること
- 相続開始直前において、会社の役員であること
- 相続開始時において、後継者グループで、50%超の議決権数を保有すること
- 後継者の議決権数が、下記に該当すること

- 相続税額(納税猶予額)および利子税に相当する担保を提供すること
※
この制度の適用を受ける非上場株式等のすべてを担保に提供した場合は、
相続税額(納税猶予額)および利子税に相当する担保の提供があったものとみなされます。
- 相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告をすること
相続税の納税猶予が打ち切りとなる場合

- この制度の適用を受けた非上場株式等の一部を譲渡した場合
- 後継者が、代表権を有しなくなった場合(やむを得ない理由がある場合を除きます)
- 資産管理会社その他一定の会社に該当した場合
- 一定基準日の雇用平均が、相続時の雇用の8割を下回った場合
- 継続届出書を税務署へ提出しなかった場合
には、
納税が猶予されている相続税の全部または一部を、
利子税と併せて、
その打ち切りの原因となる事由に該当した日から2か月以内に、納付しなければなりません。
相続税の納税猶予額が免除になる場合

- 後継者が亡くなった場合
- 経営承認期間内で、やむをえない理由により代表権を有しなくなった日以後に、免除対象贈与を行った場合
- 経営承認期間の経過後に、免除対象贈与を行った場合
- 経営承認期間の経過後に、破産手続開始決定などがあった場合
- 特例経営承認期間の経過後に、事業の継続が困難な一定の事由が生じ、会社の譲渡があった場合または解散した場合
に、
- 免除届出書
- 免除申請書
を、税務署へ提出したときは、
納税が猶予されていた相続税(または相続税の一部)は、
その納付が免除されます。
※
やむを得ない理由とは、
下記のいずれかに該当することとなったことをいいます。
- 障害等級1級の交付を受けたこと
- 身体上の障害程度1級または2級の交付を受けたこと
- 要介護5の認定を受けたこと
- 上記の事由に類すると認められること
※
免除対象贈与とは、
後継者が、
この制度の適用を受けている非上場株式等を、その者の後継者に贈与し、
その後継者も、この制度の適用を受ける場合における贈与をいいます。
適用要件を継続的に満たすことが可能かどうか

法人版事業承継税制では、
相続税の納税猶予を継続的に受け続けるためには、
- 特例経営承認期間(相続税の申告期限の翌日から5年以内)
と、
- 特例経営承認期間経過後から後継者の死亡日等の日までの期間
にわたって、
それぞれ、適用を受けるための要件を、継続的に満たす必要があります。
したがって、
それらの適用要件を、継続的に満たすことができそうにない場合には、
本特例の適用を受けないという選択をすることも一考です。
そして、
本特例の適用を受けないという選択をした場合には、
相続税の納税資金の確保する必要がありますが、
納税資金の確保のため、
相続財産のうちの非上場株式等を発行会社に譲渡した場合には、
みなし配当課税(総合課税)に代えて、
譲渡益課税(15%申告分離課税(住民税を含めると20%))が適用されることになっています。(みなし配当の特例)
また、
この場合、譲渡所得税の特例(取得費加算)の適用も受けることができます。
※
- みなし配当の特例
- 譲渡所得税の特例(取得費加算)
については、
詳しく解説していますので、ご確認くださればと思います。
あとがき

相続税の納税猶予(法人版事業承継税制)は、
相続税の納税が猶予されるだけではなく、
適用要件を継続的に満たすことができるのであれば、
最終的に、その納付が免除される制度で、
法人の事業承継を円滑に進めるために創設されました。
手続き等は煩雑ではありますが、
後継者がおり、承継するべき事業がある場合には、
積極的に適用するべきと考えます。
内容や注意点について、よくご確認くださればと思います。