住宅取得資金贈与の非課税限度額


2015年から2021年の間、直系尊属からの住宅取得資金贈与は、上記の限度額までが非課税となります。

住宅取得資金贈与の非課税制度の要件

贈与者の要件
- 父母
- 祖父母
などの直系尊属
※ 父からも祖父からも贈与を受けた場合は、双方からの合計額で判定します。

受贈者の要件
- 受贈時に、国内に住所がある
- 受贈時に、贈与者の直系卑属(子供または孫、養子)
- 受贈年の1月1日時点で、20歳以上
- 受贈年の合計所得金額が、2,000万円以下
- 2009年から2014年に、この特例の適用を受けていない
- 購入する住宅が、配偶者や親族などの所有でない(法人は可)
- 新築または増改築を請け負う者が、配偶者や親族などでない(法人は可)
- 受贈年の翌年3月15日までに、受贈金の全額で住宅等を取得し、かつ、遅くとも受贈年の翌年12月31日までに居住
(全額を充てなかった場合は、充てた分のみ適用可
居住が間に合わなかった場合は、修正申告する) - 受贈年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告をする

住宅の要件
- 国内にある
- 登記簿上の床面積が、50㎡以上240㎡以下
- 2分の1以上が、居住用
- 中古の場合は、築20年以内(耐火建築物は25年以内)または地震に対する安全性基準の適合証明
- 増改築の場合は、上記の要件に加えて、工事費が100万円以上であり、かつ、検査済証などの書類証明

- 新築
- 建売住宅
- 中古住宅
- 増改築
- 共有(共有者は、贈与者である親でも、贈与者以外の配偶者でも可)

- 贈与年の翌年3月15日までに、住宅の引渡しができない
★ 計画する上で重視するポイント
- 贈与の時期
- 住宅引渡しの時期
- 居住開始の時期
敷地の購入資金にも適用できるか

- 住宅と一緒に敷地を購入した場合
- 先に土地を購入し、その後、受贈者の住宅を建築した場合
- 受贈金の全額を、敷地の購入に充てた場合
- 借地権
- 共有
も適用可能です。
ただし、
- 受贈者は、必ず住宅持ち分を持つこと
- 共有者は、親(贈与者)でも、贈与者以外の配偶者でも可
※ 持分の定めはなし
贈与者である親と、共有により住宅・敷地を購入する場合は、
★ 親の住宅持ち分を大きくした方が有利となります。

- 土地のみ購入した場合
- 土地を購入して、その上に受贈者以外所有の住宅を建築した場合
は、適用不可です。
暦年贈与制度との併用


住宅取得資金贈与の非課税制度は、暦年贈与と併用できます。
※ 暦年贈与制度については、「暦年贈与制度|メリット・デメリットと間違えない暦年贈与の方法」をご確認ください。
相続時精算課税制度との併用
すでに選択中の場合


住宅取得資金贈与の非課税制度は、相続時精算課税制度と併用できます。
※ 相続時精算課税制度については、「相続時精算課税制度|メリット・デメリットと選択すべきケース」をご確認ください。
新たに選択する場合


住宅取得資金贈与の非課税制度を適用し、同年の贈与税の申告で、新たに相続時精算課税制度を選択可能です。
なお、
住宅取得資金贈与の非課税制度の要件を満たす場合には、
贈与者が60歳未満であっても、
相続時精算課税制度を選択できます。

暦年贈与と相続時精算課税との有利比較
判定結果


暦年贈与で、
毎年110万円ずつ贈与を行った場合、
受贈者が、
税金の負担なく手にできる合計額は、
23年で2,530万円となり、
相続時精算課税の特別控除額2,500万円より大きくなります。
しかも、
暦年贈与では、
24年目以降も毎年110万円の基礎控除を利用でき、
さらに、
相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
を全額利用できます。
これに対して、
相続時精算課税制度では、
選択年以後、
暦年贈与の基礎控除を失うばかりか、
特別控除額2,500万円は、
相続税の基礎控除額に当てこまれてしまいます。
したがって、
★ 税負担だけを考えると、暦年贈与下において、住宅取得資金贈与の非課税制度を適用した方が、有利になります。
相続時精算課税を選択すべきケース

上記の比較から考えると、
生前贈与の生涯額(贈与税非課税分を除く)と相続財産の合計額が、贈与者の相続税基礎控除額より少なくなるケースにおいては、相続時精算課税を選択しても、不利になりません。
例えば、
- 相続税の基礎控除額4,200万円
- 相続財産3,000万円
- 住宅(省エネ住宅以外)取得資金贈与2,000万円
- 贈与税の非課税とされる金額は1,000万円
- これ以外に相続税の課税価格に加算される金額はなし
という条件であれば、
相続時精算課税制度を選択した方が、
住宅取得資金を多く確保できますので、
- 住宅ローンの負担も軽くなり、
- 申告も、贈与税申告を1回するだけで良い(納税はなし)
という点で、有意義と言えます。
しかしながら、
変動する遠い将来の事象を予想し、
数字を正確に見積もることは難しいため、
相続時精算課税制度を選択するにあたっては、
よくよく検討する必要があります。
住宅ローン控除との併用

住宅取得資金贈与の非課税制度は、所得税の住宅ローン控除と併用することができます。
ただし、
住宅等の取得価額から非課税となった金額を控除しなければなりません。

〇 住宅等の取得価額から、
非課税となった金額を控除した金額以上の住宅ローン控除を受けた場合には、
受贈額の全部を、住宅等の取得に充てていないとされ、
非課税制度の適用を受けることができなくなります。
〇 建物のみローンを組んでいる場合には、
建物のみの取得価額から、
建物について非課税となった金額を控除します。
例えば、
非課税枠のすべてを土地に充て、
建物についてのみローンを組んだときには、
建物の取得価額から、
非課税となった金額は控除しません。

なお、
両制度を併用する場合には、
★ 住宅取得資金贈与の非課税枠よりも、暦年贈与の基礎控除額(年間110万円)を優先した方が、有利となります。
(受贈額が、
非課税限度額と110万円の合計額より少ない場合に、
先に110万円の基礎控除を確保してから、
残額を非課税適用額とするということ)
なぜなら、
住宅等の取得額を大きくした方が、
より多くの税額控除を受けることができるからです。
相続税に与える影響
相続税課税価格への加算
暦年贈与の場合

住宅取得資金贈与の非課税となった金額は、相続開始前3年以内贈与加算の対象とはなりません。

しかしながら、
非課税限度額を超えて贈与を受けた場合には、その超えた部分の金額は、相続税の課税価格に加算しなければなりません。
※ 相続開始前3年以内の生前贈与加算については、「相続開始前3年以内の贈与と相続税」をご確認ください。

したがって、
贈与者の相続開始前3年以内に、
住宅取得資金贈与の非課税制度の適用を受ける場合には、
★ 暦年贈与の基礎控除(年間110万円)よりも、非課税枠の利用を優先した方が、有利となります。
相続時精算課税の場合

相続時精算課税の場合も、住宅取得資金贈与の非課税となった金額は、相続税の課税価格に加算しなくてよいと定められています。

しかしながら、
非課税限度額を超えて贈与を受けた場合には、その超えた部分の金額は、相続税の課税価格に加算しなければなりません。
小規模宅地等の特例との関係

住宅取得資金贈与の非課税制度の適用を受けるかどうかにかかわらず、
住宅等を取得した場合、将来の相続において、小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなります。
なぜなら、
配偶者でない別居の親族が、
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、
「家なき子」であることが要件となっているからです。

したがって、
住宅等を取得しようとするときは、
- 将来、小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなったとしても、今、取得した方がいいのか
- 自分以外の相続人が、小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、どのようにしたらいいか
について、よく検討することが大切です。
※ 小規模宅地等(居住用)の特例については、下記をご確認ください。
あとがき

マイホームを購入しようとするとき、
ご両親などから援助を受けられる方もいらっしゃると思います。
今回は、
住宅取得資金贈与の非課税制度について、
解説しました。
この制度の適用を受けるためには、
贈与税の申告が必要です。
また、
住宅ローン控除とも併用できますが、
住宅ローン控除の適用を受けるためには、
所得税の申告が必要です。
要件などについて、ご確認くださればと思います。