死因贈与とは

死因贈与は、
「贈与者〇〇は、贈与者〇〇の死亡を条件として、自宅土地建物を、無償で受贈者△△に贈与することを約し、受贈者△△はこれを受託した」
というように、
贈与者の死亡を条件に、効力を生じさせる贈与の契約です。
死因贈与契約に、特別な書式は定められていません。
しかしながら、
第三者に主張できる形で契約書を作成しておかないと、
受贈時には、贈与者が亡くなっているため、
死因贈与契約の真正性を証明する術がなく、
その贈与について、紛争が生じる恐れがあります。
したがって、
契約時には、第三者に立会いをしてもらうなど、
その真正性を、証明できるようにしておく必要があります。
また、
死因贈与の対象財産が不動産である場合には、
仮登記を行って、所有権移転請求権を保全しておくことも可能です。
※
仮登記には、登録免許税がかかります。
(固定資産評価額の1,000分の10)
なお、
受贈者は、
贈与者の死亡により、財産を取得することにはなりますが、
財産を取得する権利は、生前の契約に基づく権利であるため、
死因贈与により取得する財産は、共同相続人との遺産分割協議の対象にはなりません。
死因贈与のメリット・デメリット

上記の点に気を付ければ、
- 自筆証書遺言の全文を、自筆で書けない場合
- 公証役場に出向くことができない場合
でも、
死因贈与契約を締結することで、
遺贈と同様の効果を得ることができるというメリットがあります。
※
自筆証書遺言については、
遺贈については、
「遺贈|包括遺贈と特定遺贈,条件付遺贈と負担付遺贈」をご確認ください。
さらに、
仮登記を行って、所有権移転請求権を保全しておくことができれば、
遺贈以上の確実性を確保できます。
※ 遺贈は、仮登記ができません。
ただし、
- 不動産取得税
- 登録免許税
の課税にあたっては、
死因贈与は、贈与として扱われるため、
遺贈(相続)の場合より、負担が大きくなります。
※
税率の違いについては、下記をご確認ください。

また、
死因贈与は、
「本件贈与を受ける負担として、受贈者は、〇〇をしなければならない」
というように、
負担付死因贈与契約とすることも可能で、
この場合、
受贈者が、その負担を履行したときは、契約の撤回に、制限が設けられています。
そして、
このことが、
死因贈与の最大のメリットと考えられています。
なぜなら、
遺贈の場合には、
遺言者の気が変われば、
いつでも、法的理由なく、遺贈の撤回ができますが、
負担付死因贈与契約の場合には、
受贈者が、負担を履行しない場合でなければ、
契約の撤回ができないため、
負担を履行した(または履行する)受贈者を、
法的に保護してくれるからです。
死因贈与と遺贈の違い

死因贈与と遺贈は、
死亡の事実により財産が移転するという点で、共通していますが、
遺贈が、
単独行為であるため、遺言者の意思表示だけで成立するのに対して、
死因贈与は、
契約であるため、受贈者の受諾が必要です。
また、
遺贈は、
15歳以上であれば、遺言を行うことができますが、
死因贈与は、
未成年者(20歳未満)は、契約することができません。
※
未成年者が、法律行為を行う場合には、
法定代理人が必要です。
※
令和4(2022)年4月1日より、
18歳未満の者が、未成年者となります。
遺贈の準用

民法においては、
「死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」
と定められています。
したがって、
受贈者が、贈与者より先に亡くなった場合には、死因贈与の効力は失われます。
また、
死因贈与により取得した財産は、遺留分算定の基礎となる財産に算入されます。
※
遺留分については、
「遺留分と遺留分侵害額請求」をご確認ください。
さらに、
死因贈与の場合も、執行者を指定することができます。
執行者を指定しておかないと、
相続人全員で手続きを行わなければならず、
手続きが煩雑になりますので、
契約時に、執行者を指定しておくことをお勧めします。
死因贈与と相続税
相続税の課税と申告

相続税法においても、
- 遺贈には、死因贈与を含む
- 贈与からは、死因贈与を除く
と規定し、
死因贈与により取得した財産に、贈与税ではなく、相続税を課税し、
死因贈与の効力が生じたことを知った日の翌日から10か月以内に、
相続税の申告をすることとしています。
また、
- 代表者
- 管理者
の定めのある人格のない社団等が、
死因贈与によって、財産を取得した場合には、
その人格のない社団等は、個人とみなされて、
相続税の納税義務を負うこととされています。
※ この点も、遺贈の規定と同様です。
相続税の2割加算

死因贈与により財産を取得した者が、
- 配偶者
- 一親等の血族(その者の代襲者を含みます)
以外の者である場合で、
その者に、相続税が算出されたときは、その者の相続税に、その2割が加算されます。
あとがき

死因贈与契約が締結されていた場合、
受贈者は、
贈与者の死亡により、財産を取得することになり、
相続税法において、
死因贈与は、遺贈の中に含まれるため、
その財産には、相続税が課税されます。
民法においても、
性質に反しない限り、遺贈の規定を準用することとされています。
ただし、
その財産の取得は、契約に基づく権利であるため、
共同相続人との間の、遺産分割協議の対象にはなりません。