
配偶者が、相続(または遺贈)により財産を取得した場合、
配偶者の生活基盤を確保するため、
配偶者の相続税を軽減する規定が設けられています。
※ 遺贈については、「遺贈|包括遺贈と特定遺贈,条件付遺贈と負担付遺贈」をご確認ください。
控除の対象となる配偶者

- 無制限納税義務者、制限納税義務者の両方とも適用できます。
- 相続を放棄しても、遺贈により財産をした場合には、適用できます。
- 婚姻の届出が必要であるため、内縁関係にある者は、適用できません。
※ 相続の放棄については、「相続の放棄|手続きと相続税申告」をご確認ください。
配偶者の相続税から控除できる金額

- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
とのいずれか多い金額
※ 上記の金額を、配偶者の相続税額から引ききれない場合には、引ききれない金額は切り捨てられます。
※ 法定相続分については、「相続人と相続分|法定相続人と法定相続分」をご確認ください。
遺産が未分割の場合

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、
遺産分割が調ったうえでの配偶者の相続税額を控除することとしているため、
遺産が未分割の状態で、期限内申告をする場合には、適用することができません。
ただし、
「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したうえで、
相続税申告書の提出期限から3年以内に遺産分割が調えば、
遺産分割が確定したことを知った日の翌日から4か月以内に、更正の請求を行うことにより、
配偶者の税額軽減(配偶者控除)を適用することができます。
※ 遺産が未分割の場合については、「遺産未分割のデメリットと相続税申告」をご確認ください。
財産の隠蔽または仮装があった場合

配偶者が、
相続(または遺贈)により、隠蔽または仮装した財産を取得した場合には、
財産のうち、隠蔽または仮装した部分対応する部分に対して、
配偶者の税額軽減(配偶者控除)の適用を受けることはできません。
具体的には、次の算式で計算されます。
A ×{(CまたはDのいずれか少ない金額)/ B }
A:隠蔽または仮装した金額を相続税課税価格に含めないで計算した相続税の総額
B:相続税課税価格の合計額から隠蔽または仮装した金額を控除した金額
C:1と2のいずれか多い金額
- (相続税課税価格の合計額 - 隠蔽または仮装した金額)× 配偶者の法定相続分
- 1億6,000万円
D:配偶者が取得した財産の価額 - 隠蔽または仮装した金額
配偶者の税額軽減(配偶者控除)と二次相続

上記のように、
配偶者の税額軽減(配偶者控除)では、
最低でも1億6,000万円、
多ければ何億円もの控除を受けることができます。
例えば、
相続税課税価格が10億円で、
相続人が配偶者と子供の場合には、配偶者の法定相続分は2分の1ですので、
配偶者の税額軽減(配偶者控除)額は、5億円となります。
この控除を最大限に活用すれば、相続税の負担は大きく軽減されますので、
遺産が少ない場合には、
この配偶者の税額軽減(配偶者控除)を、最大限活用するべきと考えます。
しかしながら、
この相続(一次相続)に続く次の相続(二次相続)が、短期間のうちに発生することが想定される場合には、
一次相続において、配偶者の税額軽減(配偶者控除)の最大限の適用を、前提に置かずに、
一次・二次、両方の相続を併せて、相続税を考えた方が、その負担を軽減することができます。
ここで、
一次相続と二次相続を併せて考える場合には、
以下の点に注意が必要です。

1.二次相続において、一次相続で取得する財産以外の、配偶者がもともと所有していた財産を含めて検討すること
一次相続と二次相続を併せて考えるとき、
二次相続では、
配偶者が、一次相続以前からもともと所有していた財産をも、
できるだけ把握して、検討に含めることが大切です。

2.一次相続から二次相続までの間の財産の増減について、できるだけ検討に組み入れること

3.一次相続から二次相続までの間に、生前贈与を検討すること
一次相続から二次相続までの間に、
配偶者が、一次相続以前からもともと所有していた財産も含めて、生前贈与を検討することで、
相続税を更に軽減することができます。
生前贈与にあたっては、以下の点に注意が必要です。
- 贈与はできるだけ早い時期に実行し、相続開始前3年以内の贈与となることが想定される場合は、相続税課税価格に加算されることを理解しておくこと
- 贈与税率が、二次相続における相続税率より低くなる範囲で、贈与を実行すること
- ひとりだけでなく、孫などを含め、複数の者への贈与を検討すること
※ 生前贈与については、「暦年贈与|メリット・デメリットと間違えない暦年贈与の方法」をご確認ください。
※ 相続開始前3年以内の生前贈与加算については、「相続開始前3年以内の贈与と相続税」をご確認ください。

4.一次相続において、配偶者以外の相続人に、小規模宅地等の特例が適用できない場合には、配偶者が小規模宅地等の特例の対象となる土地を相続すること
※ 小規模宅地等の特例については、下記をご確認ください。
なお、
一次相続において、
配偶者以外の相続人に、小規模宅地等(居住用)の特例が適用できる場合には、
配偶者居住権を活用するのも一考です。
※ 配偶者居住権については、「配偶者居住権|制度の内容と相続税申告」をご確認ください。

5.収益を生み出す財産は、次の世代の相続人が相続すること
収益を生み出す財産は、
配偶者が相続するより、故人や配偶者の次の世代の相続人が相続するようにすると、
その財産の相続を一世代飛び越すことができるとともに、
その財産が生み出す収益の蓄積分を、
相続税の負担なしに、次の世代に移転することができます。
あとがき

配偶者の優遇措置には、
- 相続税の税額軽減(配偶者控除)
- 贈与税の配偶者控除(夫婦間での居住用不動産の贈与)
があり、今回は、相続税の税額軽減(配偶者控除)について、解説しました。
※ 贈与税の配偶者控除については、「贈与税配偶者控除(おしどり贈与)|要件と注意点」をご確認ください。
財産の総額によって、
適用を受けた方が良い場合と、
適用を受けない方が良い場合がありますので、
内容をご確認くださればと思います。