
小規模宅地等の特例では、
- 居住用
- 事業用(3を除く)
- 貸付事業用
の3種類の宅地等について、
相続税課税価格の減額を受けることができます。
今回は、上記2の事業用宅地等について、解説します。
上記1と3の宅地等については、下記をご確認ください。
なお、
3種類の小規模宅地等の特例の併用については、「小規模宅地等特例の併用と注意点(3種類共通)」をご確認ください。
小規模宅地等(事業用)特例の限度面積と減額割合

適用対象宅地等が複数ある場合には、
合計して400㎡まで適用可
★ 1㎡あたりが高額な宅地等を優先適用すると有利
小規模宅地等(事業用)特例の宅地等の要件

小規模宅地等(事業用)の特例は、
- 故人の事業用宅地等
- 生計同一親族の事業用宅地等
について、適用を受けることができます。
※ 宅地等の上には、建物や構築物が必要です。

- 更地のままの資材置き場
- 事業用車両の青色駐車場
は、適用不可です。
小規模宅地等(事業用)特例の取得者の要件


1. 故人の事業用宅地等

- 相続税の申告期限までに、その宅地等上の故人の事業を引き継ぎ、かつ、申告期限までその事業を営んでいること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
2. 生計同一親族の事業用宅地等

- 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等上で事業を営んでいること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
3. 平成31年度の改正

宅地等の上では、故人が亡くなる3年より以前から、事業を行っていなければなりません。
ただし、
- 一定の規模以上の事業
- 令和4年3月31日までの相続
の場合は、この限りではありません。
詳細は、国税庁のホームページ「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」をご確認ください。
小規模宅地等(事業用)特例の注意点
転業した場合

故人の事業を引き継いだ親族が、
相続税の申告期限までに、事業を転業した場合、
転業後の事業に、転業前との同一性があれば、
小規模宅地等(事業用)特例を、適用可能です。
一部の事業を廃業した場合

故人が、生前に、
その宅地等の上で、複数の事業を営んでいた場合、
事業を引き継いだ親族が、
一部の事業を廃業したとき、
その廃業部分に対応する宅地等は、
小規模宅地等(事業用)特例は、適用不可となります。
(租税特別措置法通達69-4-16)
生前贈与の場合

故人の生前、
- 事業用宅地等の贈与を受け、相続時精算課税を選択している場合
- 暦年贈与により、相続開始前3年以内に事業用宅地等の贈与を受けている場合
には、
その宅地等の価額を、相続税の課税価格に加算しなければなりませんが、
これらについて、
小規模宅地等(事業用)特例は、適用不可です。
制度の詳細については、下記をご確認ください。
事業用個人資産の相続税の納税猶予・免除

小規模宅地等(事業用)特例の適用を受けた場合、故人から相続(または遺贈)財産を受け取ったすべての者は、「個人の特定事業用資産の相続税の納税猶予・免除」の適用を受けることができません。
したがって、
両制度の適用を受けることができる場合には、
どちらを選択するかについて、検討することになります。
両制度の特徴としては、
【個人の事業用資産の相続税の納税猶予】
- 後継者以外の相続人の相続税は軽減されない
- 事業用の債務は、特定事業用財産の価額から控除し、相続税の債務控除は適用できない(後継者以外の相続人の相続税は軽減されない)
【小規模宅地等(事業用)の特例】
- 後継者以外の相続人の相続税も軽減される
- 事業用の債務は、相続税の債務控除が適用される(後継者以外の相続人の相続税も軽減される)

※
個人の特定事業用資産の相続税の納税猶予・免除については、
「事業用資産の相続税の納税猶予|個人版事業承継税制」をご確認ください。
※
納税猶予適用から5年経過後に、特定事業用資産のすべてを現物出資して法人化する場合、
その会社の株式等を保有し続ける間は、「個人の特定事業用資産の相続税の納税猶予」の適用が認められていますが、
医療法人の法人化については、その適用は認められません。
したがって、
後継者が、将来医療法人の設立を検討している場合には、
個人の特定事業用資産の納税猶予ではなく、
小規模宅地等(事業用)の特例の適用を選択するべきと考えます。
あとがき

小規模宅地等の特例は、
故人の亡き後、
相続人の生活基盤を守ろうとするもので、
第二の基礎控除とも称されています。
事業用宅地等も、居住用と同様、
配偶者や生計同一親族の生活基盤として、
重要な相続財産と考えられており、
この特例が認められています。
したがって、
事業用の小規模宅地等特例についても、
居住用と併せて、しっかり確認しておきましょう。