
小規模宅地等の特例では、
- 居住用
- 事業用(3を除く)
- 貸付事業用
の3種類の宅地等について、
相続税課税価格の減額を受けることができます。
今回は、上記1の居住用宅地等について、解説します。
上記2と3の宅地等については、下記をご確認ください。
なお、
3種類の小規模宅地等特例の併用については、「小規模宅地等特例の併用と注意点(3種類共通)」をご確認ください。
小規模宅地等(居住用)特例の限度面積と減額割合

〇 故人の居住用宅地等が複数ある場合には、
主とする一の宅地等に限り適用可
〇 生計同一親族の居住用宅地等は、
生計同一親族ごとに、主とする一つずつ、
故人の居住用宅地等と併せて 330㎡まで適用可
★ 1㎡あたりが高額な宅地等を優先適用すると有利
〇 別荘は、適用不可
小規模宅地等(居住用)特例の宅地等の要件

小規模宅地等(居住用)の特例は、
- 故人の居住用宅地等
- 生計同一親族の居住用宅地等(別居)
について、適用を受けることができます。
※ 宅地等の上には、建物が必要です。

〇 自宅建物と一体として利用されている場合には、
- 自家用駐車場
- 庭
- 家庭菜園(農地は不可)
も適用可能です。
小規模宅地等(居住用)特例の取得者の要件

1. 故人の居住用宅地等
(1) 配偶者

配偶者は、何の要件もなく、必ず小規模宅地等(居住用)特例の適用可能です。

したがって、
- 別居していた
- 相続後に売却した
- 相続後に賃貸に出している
場合にも、適用可能です。
※ 婚姻の事実が必要なため、事実婚・内縁関係の場合は適用不可
(2) 同居親族

下記のすべてを満たす必要があります。
- 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その建物に居住していること
- 相続開始時から相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること

なお、
単身赴任の場合には、
赴任先ではなく、家族の居住する自宅を、
生活の本拠と考えるため、
適用可能です。
(3) (1)(2)以外の親族(家なき子)

下記のすべてを満たす必要があります。
- 故人に配偶者がいない
- 故人と同居している法定相続人がいない(法定相続人でない同居親族は可)
※ 配偶者・同居親族(法定相続人)が相続放棄をしても、適用不可です。
- 相続開始前3年以内に、自己・自己の配偶者・自己の3親等内親族・自己との特別関係法人が所有する家屋に住んでいない
- 相続開始時において住んでいる家屋が、過去、自己の所有であったことがない
※ 2020年3月31日までの相続については、経過措置があります。
- 相続開始時から相続税の申告期限まで、その宅地等を有している
- 制限納税義務者の場合は、日本国籍を有している

したがって、
- 兄弟姉妹・甥
- 養子(親族でない場合)
- 相続後に、故人の居住用宅地等に引っ越していない場合
- 相続後に、故人の居住用宅地等を賃貸に出している場合
でも、適用可能です。
※ 居住要件はありません。
2. 生計同一親族の居住用宅地等(別居)
(1) 配偶者

配偶者は、何の要件もなく、必ず小規模宅地等(居住用)特例の適用可能です。
※ 生計同一親族の居住用宅地等に住んでいなくても、適用可能です。
(2) 生計同一親族

下記のすべてを満たす必要があります。
- 相続開始前から相続税の申告期限まで、その家屋に居住していること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
※ 生計同一については、下記のように定められています。
「生計を一にしている」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをその要件とするものではなく、次のような場合には、それぞれ次によることとなる。
(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとされる。
イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合
(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとされる。
所得税基本通達2-47
小規模宅地等(居住用)特例の注意点
老人ホームに入居していた場合

故人が老人ホームで亡くなった場合、下記のすべての要件を満たすときは、入居前の居住用宅地等は、小規模宅地等(居住用)特例の適用可能です。
- 故人が、要介護認定または要支援認定等を受けていた
- 入居老人ホームが、老人福祉法、介護保険法、高齢者の居住の安定確保に関する法律、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する施設である
- 老人ホームに入居中、自宅を入居前の状態のままにしており、入居を機に、賃貸に出したり、親族などが居住したりしていなかった
二世帯住宅の場合

完全分離型の二世帯住宅についても、小規模宅地等(居住用)特例の適用可能です。

ただし、
区分所有登記している場合には、その部分については、適用不可です。

なお、
- 共有登記
- 未登記
の場合も、適用可能です。
建設中の場合

自己の居住用として建設されていることが明らかである場合には、小規模宅地等(居住用)特例の適用可能です。
- 建て替え
- リフォーム
により、一時的に賃貸住宅に居住していた場合も同様です。
生前贈与の場合

故人の生前、
- 居住用宅地等の贈与を受け、相続時精算課税を選択している場合
- 暦年贈与により相続開始前3年以内に居住用宅地等の贈与を受けている場合
には、
その宅地等の価額を、相続税の課税価格に加算しなければなりませんが、
これらについて、
小規模宅地等(居住用)特例は、適用不可です。
制度の詳細等については、下記をご確認ください。
あとがき

小規模宅地等の特例は、
故人の亡き後、
相続人の生活基盤を守ろうとするもので、
第二の基礎控除とも称されています。
特に、
居住用の宅地等は、
配偶者や生計同一親族の生活基盤として、
最も重要な相続財産と考えられており、
この特例が認められています。
したがって、
まずは、
居住用の小規模宅地等の特例について、
しっかり確認しておきましょう。