
小規模宅地等の特例では、
- 居住用
- 事業用(3を除く)
- 貸付事業用
の3種類の宅地等について、
相続税課税価格の減額を受けることができます。
今回は、上記3の貸付事業用宅地等について、解説します。
※ 貸付事業とは、
- 不動産貸付業
- 駐車場業
- 自転車駐車場業
- 事業規模に満たない不動産の貸付け
です。
上記1と2の宅地等については、下記をご確認ください。
なお、
3種類の小規模宅地等の特例の併用については、「小規模宅地等特例の併用と注意点(3種類共通)」をご確認ください。
小規模宅地等(貸付事業用)特例の限度面積と減額割合

貸付事業用宅地等に適用される限度面積と減額割合は、


です。
小規模宅地等(貸付事業用)特例の宅地等の要件

小規模宅地等(貸付事業用)の特例は、
- 故人の貸付事業用宅地等
- 生計同一親族の貸付事業用宅地等
について、適用を受けることができます。
※ 宅地等の上には、建物や構築物が必要です。

- アスファルト敷き駐車場
- コインパーク
- 立体駐車場
- タワー駐車場
は適用可能で、

- 更地のままの青空駐車場
- ロープ区画の駐車場
は適用不可です。
小規模宅地等(貸付事業用)特例の取得者の要件

1. 故人の貸付事業用宅地等
(1) 同族会社に貸付け


- 同族会社から、周辺と同じくらいの家賃または地代を受け取っていること
- 同族会社:収入から経費を控除して相当の利益がでていること
※ 同族会社:相続開始の直前に、故人および親族等の支配権が50%超の法人
① 同族会社が、相続開始の直前から相続税の申告期限まで、貸付事業以外の事業を行っている場合

- 相続税の申告期限に、その法人の役員であること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
② 同族会社が、相続開始の直前において、貸付事業を行っている場合

- 相続税の申告期限までに、故人の貸付事業を継ぎ、かつ、引き続きその貸付事業を行っていること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
(2) 同族会社以外に貸付け


- 相続税の申告期限までに、故人の貸付事業を継ぎ、かつ、引き続きその貸付事業を行っていること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
2. 生計同一親族の貸付事業用宅地等
(1) 同族会社に貸付け


- 同族会社から、周辺と同じくらいの家賃を受け取っていること
- 同族会社:収入から経費を控除して相当の利益がでていること
① 同族会社が、相続開始の直前から、相続税の申告期限まで、貸付事業以外の事業を行っている場合

- 相続税の申告期限において、その法人の役員であること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
② 同族会社が、相続開始の直前において、貸付事業を行っている場合

- 相続税の申告期限までに、故人の貸付事業を継ぎ、かつ、引き続きその貸付事業を行っていること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
(2) 同族会社以外に貸付け


- 相続開始前から相続税の申告期限まで、その宅地等の貸付事業を行っていること
- 相続税の申告期限まで、その宅地等を有していること
3. 平成31年度の改正

上記1(1)①および2(1)①以外の宅地等の上で、故人が亡くなる3年より以前から、貸付事業を行っていなければなりません。
ただし、
3年より以前から、
別の宅地等の上で、
事業規模の貸付事業を営んでいる場合は、適用可能です。
【事業規模】
- 5棟50室基準
- 駐車場は50台以上
小規模宅地等(貸付事業用)特例の注意点
空室がある場合


その空室が一時的であれば、小規模宅地等(貸付事業用)特例を、適用可能です。
※ 空室期間の定めはありません。
被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等には、相続開始の時において一時的に賃貸されていなかったと認められる部分がある場合における当該部分に係る宅地等の部分が含まれる
【租税特別措置法通達69の4-24の2(一部抜粋)】
相続開始の直前に空室となったアパートの1室については、空室となった直後から不動産業者を通じて新規の入居者を募集しているなど、いつでも入居可能な状態に空室を管理している場合は、相続開始時においても被相続人の貸付事業の用に供されているものと認められ、また、申告期限においても相続開始時と同様の状況にあれば被相続人の貸付事業は継続されているものと認められる。
したがって、そのような場合は、空室部分に対応する敷地部分も含めて、アパートの敷地全部が貸付事業用宅地等に該当することとなる。
【国税庁 資産課税課情報2010年7月13日 共同住宅の一部が空室となっていた場合(一部抜粋)】
建築中や、建築直後で準備中・募集中の場合

- 建物の建築(新築)中
- 建築完成後、賃借人募集中(または募集準備中)
の場合は、
小規模宅地等(貸付事業用)特例は、適用不可です。

(注)新たに貸付事業の用に供する建物等を建築中である場合や、新たに建築した建物等に係る賃借人の募集その他の貸付事業の準備行為が行われている場合に過ぎない場合には、当該建物に係る宅地等は貸付事業の用に供されていた宅地等に該当しない。
【租税特別措置法通達69の4-24の2(一部抜粋)】
生前贈与の場合

故人の生前、
- 貸付事業用宅地等の贈与を受け、相続時精算課税を選択している場合
- 暦年贈与により相続開始前3年以内に貸付事業用宅地等の贈与を受けている場合
には、
その宅地等の価額を、相続税の課税価格に加算しなければなりませんが、
これらについて、
小規模宅地等(貸付事業用)特例は、適用不可です。
制度の詳細等については、下記をご確認ください。
あとがき

小規模宅地等の特例は、
故人の亡き後、
相続人の生活基盤を守ろうとするもので、
第二の基礎控除とも称されています。
貸付事業用宅地等も、居住用や事業用と同様、
配偶者や生計同一親族の生活基盤として、
重要な相続財産と考えられており、
この特例が認められています。
したがって、
貸付事業用の小規模宅地等特例についても、
居住用や事業用と併せて、しっかり確認しておきましょう。