
相続税・贈与税には、
本税である相続税・贈与税以外に、
- 延滞税
- 加算税
が課されることがあり、
それぞれ、相続税・贈与税と同じ税目の国税として、
相続税・贈与税と併せて徴収されます。
相続税・贈与税の延滞税(1,000円未満は切り捨て)
延滞税が課される場合

相続税・贈与税の全部または一部を、その納期限までに納付しない場合には、未納税額に対して延滞税が課されます。
具体的には、下記の場合に、延滞税が課されます。
1.
期限内申告
確定した税額を、法定納期限までに完納しない場合
2.
- 期限後申告
- 修正申告
- 更正
- 決定
納付すべき税額が、法定納期限後に確定した場合
※ 更正:税務署が行う処分で、納税者の申告税額を正すもの(増額更正と減額更正があります。)
※ 決定:税務署が行う処分で、無申告の場合の税額を決めるもの
延滞税の額

相続税・贈与税の法定納期限の翌日から、完納するまでの期間に応じ、未納税額に、下記の割合を乗じて計算した額
1.
- 納期限までの期間
- 納期限の翌日から2月を経過する日までの期間
- 「年7.3%」
- 「特例基準割合+1%(令和2年1月1日から12月31日までは年2.6%)」
のいずれか低い割合
2.
- 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後
- 「年14.6%」
- 「特例基準割合+7.3%(令和2年1月1日から12月31日までは年8.9%)」
のいずれか低い割合
なお、
- 特例基準割合+1%
- 特例基準割合+7.3%
は、低金利が続いている近年の経済状況に鑑み、
当面の軽減措置とされています。

また、
納期限は、下記のように定められています。
- 期限内申告:法定納期限
- 期限後申告:期限後申告書の提出日
- 修正申告:修正申告書の提出日
- 更正:更正通知書の発行日の翌日から1月を経過した日
- 決定:決定通知書の発行日の翌日から1月を経過した日




延滞税が課されない期間

期限内申告書を提出している場合
法定申告期限から1年を経過した日よりも後に、
- 修正申告をしたとき
- 更正を受けたとき
は、法定申告期限から1年を経過した日の翌日から、
- 修正申告書を提出した日
- 更正を受けた日
までの期間は、
延滞税が課される期間から除かれます。
期限後申告書を提出している場合
期限後申告書の提出日の翌日から1年を経過した日よりも後に、
- 修正申告をしたとき
- 更正を受けたとき
は、期限後申告書の提出日から1年を経過した日の翌日から、
- 修正申告書を提出した日
- 更正を受けた日
までの期間は、
延滞税が課される期間から除かれます。
.png)
.png)
未納税額の一部を納付した場合

未納税額の一部を納付した場合には、
納付額は、
未納である国税の納税に、優先的に充当され、
納付の日の翌日以後は、
納付額を控除した国税の未納残額に対して、
延滞税が課されます。
災害等があった場合の延滞税の免除

下記の期間に対応する延滞税は、免除を受けることができます。
- 災害等による納税の猶予:納税の猶予をした期間
- 災害等を理由として国税の納期限が延長された場合:延長された期間
※ 免除の手続き等については、国税庁ホームページ「延滞税の免除」をご確認ください。
相続税・贈与税の加算税(5,000円未満は切り捨て)
加算税の納税義務の確定と納期限

相続税・贈与税の加算税には、
- 過少申告加算税(またはこれに代わる重加算税)
- 無申告加算税(またはこれに代わる重加算税)
があります。
過少申告加算税は、期限内申告をした当初申告税額が、確定税額より過少であった場合に課され、
※ 還付金が減少する場合にも、過少申告加算税が課されます。
無申告加算税は、期限内申告をしていない場合に課されます。
これらの加算税の納税義務は、賦課決定によって確定し、
納期限は、賦課決定通知書の発行日の翌日から1月を経過する日となっています。
過少申告加算税または過少申告加算税に代わる重加算税

過少申告加算税
1.
修正申告をした場合
- 調査の事前通知前に自主的に修正申告した場合:課されない
- 調査による更正を予知したものでないとき:増差税額の5%
- 上記以外:増差税額の10%
さらに、
増差税額が、
- 期限内申告
- 50万円
のいずれか多い金額を超える場合には、
その超える金額の5%が加算されます。
2.
増額更正を受けた場合
増差税額の10%
さらに、
増差税額が、
- 期限内申告
- 50万円
のいずれか多い金額を超える場合には、
その超える金額の5%が加算されます。
なお、
過少申告加算税が課される原因となった財産を、
期限内申告において、課税価格に含めていなかったことについて、正当な理由がある場合には、
その正当な理由がある財産の課税価格に相当する金額に、過少申告加算税は課されません。
例えば、
所有権が誰にあるのかについて、相続人間で係争中の財産を、相続税の課税価格に含めずに期限内申告をした場合、
その係争で、係争中の財産が、自己の所有とされる可能性が低かったときには、
その財産の相続税課税価格に相当する金額に、過少申告加算税は課税されないと考えます。

過少申告加算税に代わる重加算税
隠蔽または仮装あった場合には、
上記の過少申告加算税の代わりに、
増差税額に対して35%の重加算税が課されます。
※ 隠蔽:相続財産または受贈財産を故意に除外、証拠書類を廃棄など、事実を隠すこと
※ 仮装:存在しない課税要件事実が存在するように見せかけること

無申告加算税または無申告加算税に代わる重加算税

無申告加算税
1.
期限後申告または決定があった場合
- 調査の事前通知前に行われたとき:確定税額の5%
- 調査による更正・決定を予知したものでないとき:確定税額の10%
- 上記以外:確定税額の15%
さらに、
確定税額が、50万円を超える場合には、
50万円を超える部分の金額の5%が加算されます。
2.
- 期限後申告
- 決定
があった後に
- 修正申告
- 増額更正
があった場合
- 調査の事前通知前に行われたとき:確定税額の5%
- 調査による更正を予知したものでないとき:増差税額の10%
- 上記以外:増差税額の15%
さらに、
- 確定税額
- 増差税額
が、50万円を超える場合には、
50万円を超える部分の金額の5%が加算されます。
なお、
期限内申告をしなかった正当な理由がある場合、
期限内申告はできなかったけれど、法定納期限までに納税(全額)を完了しており、
法定申告期限から1月以内に期限後申告を行ったときには、
無申告加算税は課されません。
また、
期限内申告をしなかったことについて、正当な理由がある財産に対応する確定税額または増差税額は、
無申告加算税の対象とされません。
無申告加算税に代わる重加算税

隠蔽または仮装があった場合には、
上記の無申告加算税の代わりに、
- 確定税額
- 増差税額
に対して40%の重加算税が課されます。
無申告を繰り返している場合

- 期限後申告
- 修正申告
- 更正
- 決定
があった場合に、
それらがあった日より前の5年内に
- 無申告加算税
- 無申告加算税に代わる重加算税
を課されたことがあるときは、
それぞれの税率に、10%が加算されます。

あとがき

- 法定申告期限までに申告・納税をしなかった場合
- 法定申告期限後に、追徴課税が行われた場合
には、
本税に加えて、
- 延滞税
- 加算税(過少申告加算税・無申告加算税・重加算税)
をも、納付しなければなりません。
その負担がどのくらいになるのかについて、
ケース別にまとめましたので、
ご確認くださればと思います。