再転相続とは


甲の相続(一次相続)が開始し、
相続人乙が、
- 甲の相続の承認または放棄をする前に、
- 甲の相続の遺産分割が完了する前に、
乙の相続(二次相続)が開始することを、再転相続といいます。
※
相続の承認については、
相続の放棄については、
遺産分割については、
「遺産分割の3つの手続き|遺産分割協議を中心に」をご確認ください。
相続の承認と放棄

AとBは、甲と乙の両方の相続において共同相続人となりますが、
それぞれの相続の承認と放棄については、
下記のように、
その組み合わせによって、可能な場合と不可能な場合があります。

つまり、
乙の相続を放棄するのであれば、
甲の相続は承認できないということです。
※ 他の場合は、可能
なお、
甲と乙の関係が、疎遠であり、
乙が、
甲の相続人となったことを知らないまま、亡くなってしまう場合もあるかと思います。
そして、
そのような場合の、甲の相続の放棄について、
2019年8月9日の最高裁判決で、
乙が、甲の相続人となったことを知らないまま死亡した場合、
乙の相続人(AとB)は、
自分が甲の相続人(再転相続人)となったことを知った日から3か月以内であれば、
甲の相続を放棄できることが認められました。
このことにより、
自分が再転相続人になったことを知らないまま、相続放棄の期限が過ぎてしまい、
自分の意に反して、望まない権利義務を承継してしまう
という事態が解消されることになりました。
再転相続と遺産分割

甲と乙の両方の相続において、相続の放棄がなかった場合、
1.甲の相続(一次相続)について、共同相続人(乙・A・B)の間で遺産分割を行い、
その後、
2.乙の相続(二次相続)について、共同相続人(A・B)の間で遺産分割を行う
という遺産分割の流れになります。
ただし、
甲の相続(一次相続)の遺産分割を行うにあたって、
乙は亡くなってしまっているため、
乙の取得する財産は、
AとBが、2人で決めて構わないことになっています。
※
乙に、財産を全く取得させない
とすることも可能です。
その後、
AとBで、乙の相続(二次相続)の遺産分割を行いますが、
乙の相続の遺産分割の対象となる財産には、
- 乙の固有財産
- 乙が、甲の相続により取得した財産
の両方が含まれることになります。
なお、
甲の相続(一次相続)財産の中に不動産があり、
その不動産を、
一次相続で乙が取得し、
乙の相続(二次相続)でAが取得することになった場合、
その登記については、
下記のような「遺産分割協議証明書」を添付すれば、
中間省略登記(甲の所有権の登記を省略して、Aの所有権登記を行うこと)が可能です。

再転相続と相続税の申告

甲の相続税の申告について、
その申告期限は、
- 乙の申告期限:乙の相続開始を知った日の翌日から10か月以内(AとBが申告する)
- AとBの申告期限:甲の相続開始を知った日の翌日から10か月以内
となりますが、
実務上は、
乙の分の申告も含めた(乙・A・Bの)連名で、
甲の相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行われることになります。
ここで、
乙を相続人とする申告において、
それぞれの要件に該当する場合には、
- 配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)
- 小規模宅地等の特例
を適用することができます。
※
配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)については、
「配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)|要件と注意点」を、
小規模宅地等の特例については、下記をご確認ください。
また、
再転相続の場合は、一次相続と二次相続の間の間隔が短いため、
一次相続で相続税が発生した場合には、
二次相続において、
その相続税のうち一定の金額を控除することができる「相次相続控除」の適用を受けることができます。
【相次相続控除】
一次相続と二次相続の期間が10年以内であり、
二次相続の被相続人に対して、一次相続の相続税が課税されていた場合には、
二次相続において、
一次相続の相続税のうちの下記の金額が、
二次相続の相続税から控除されます。
① × ③/ (②-①) × ④/③ × (10-⑤) /10
①:二次相続の被相続人が、一次相続で取得した財産に課せられた相続税額
②:二次相続の被相続人が、一次相続で取得した純資産価額
※
純資産価額:取得財産の価額 + 相続時精算課税適用財産の価額 - 債務・葬式費用の金額
③:二次相続で財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
④:控除対象者の相続人が二次相続で取得した純資産価額
⑤:一次相続から二次相続までの経過年数(1年未満の期間は切り捨て)
相次相続控除では、
二次相続の被相続人が、一次相続で課せられた相続税額を、
二次相続の相続人が、その取得した財産の割合に応じて控除できますので、
再転相続では、
二次相続の相続人(AとB)が、
それぞれ相次相続控除を適用することができます。
※
相次相続控除額は、
一次相続の開始時から、1年につき10%ずつ減額されていきます。

ただし、
二次相続の被相続人は、
一次相続の被相続人の配偶者であるケースが多く、
その場合、さらにその多くのケースで、
その配偶者は、
一次相続の相続税の計算において、
配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)の適用を受けて、
相続税額は算出されていません。
そして、
相続税額が算出されていない場合は、
相次相続控除の控除額も算出されません。
最後に、
再転相続では、前述したように、
二次相続の相続人(AとB)は、
一次相続において、乙が取得する財産を、
自由に決めることができるので、
遺産分割にあたっては、
一次相続と二次相続を併せて、
全体として、相続税の負担が最も少なくなるように、
十分に検討を行うべきと考えます。
あとがき

相続が立て続けに開始した場合には、
遺産分割と相続税について、
2つの相続を切り離さずに、併せて考えることが大切です。
それぞれの重要ポイントについて、解説していますので、
内容をご確認くださればと思います。